新型コロナウイルスの感染が広がっています。爆発的な感染拡大が生じかねない状況です。その状況に至った欧米諸国では、患者の増加、病床・医療資器材の不足などによって、大変な状況です。医療崩壊です。NYでは、心肺停止患者の医療機関への搬送をやめたようです。
 日本は、そんな状況にならないことを何とか祈っているところですが、すでに大変な状態の地域もあるのかもしれません。

 そんな状況の中、救急隊員が知っておくとよい新型コロナウイルス対応をまとめました。考える時間や余裕のない心肺停止(CPA)事案への対応を中心に考えます。誰かがガイドラインを作るときに参考になるとよいなあ・・と思って気合いれてまとめます。とはいっても、このWebサイトをすぐに信頼してくれないでしょうからできるだけ根拠を示しますね。

 まずは隊員の感染防御です。

感染防御

 CPAに対して行われる一般的な処置(心肺蘇生、用手換気、気管挿管など)は、エアロゾルを大量に発生させる処置です。なのでCPA対応には、N95マスクを含めた個人防護具が原則です。

(・・・でもN95マスクが簡単には手に入らない本部もあるはず。普通のマスクやガウンでさえ。品物はあっても予算がなくて買えないとこもきっとある?)

日本環境感染学会は、 心肺蘇生などを “一時的に大量のエアロゾルが発生しやすい状況” として、 “眼・⿐・⼝を覆う個⼈防護具(アイシールド付きサージカルマスク、あるいはサージカルマスクとゴーグル/アイシールド/フェイスガードの組み合わせ)、キャップ、ガウン、⼿袋”の装着に加え、N95マスクの着用が必要であるとしている

「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第2版改訂版 ver.2.1)」日本環境感染学会

米国CDCは、心肺蘇生、挿管などを、エアロゾルを発生させる処置として、医療提供者の目、鼻、または口が保護されていない状態ではハイリスクであると評価している

CDC「Interim U.S. Guidance for Risk Assessment and Public Health Management of Healthcare Personnel with Potential Exposure in a Healthcare Setting to Patients with Coronavirus Disease (COVID-19)

コロナの疑われるCPAにはN95が必須といっても日本中の発生するCPAすべてにN95マスクを使うほど資器材に余裕があるわけありません。標準的なPPEはするにしてもN95は貴重です。COVID-19の地域への感染の広がりによって、感染防御の装備の程度は変える必要がありますね。大まかに3つにわけてみます。

  1. 感染未確認地域
  2. 感染確認地域・感染拡大警戒地域
  3. 医療崩壊地域

感染未確認地域 、 感染確認地域、感染拡大警戒地域の定義は、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年4月1日) に記載されている「 地域区分について 」を使うのが良いでしょう。

1.感染未確認地域

どこが該当?

直近の1週間において、感染者が確認されていない地域(海外帰国の輸入例は除く。 直近の 1 週間においてリンクなしの感染者数もなし) です。県でいうと鳥取、島根、岩手ですね(2020/4/9)。その他の県でも、二次医療圏や消防の管轄地域、市町村などの単位でみるとほとんど心配ない地域もあるはず。地域MC協議会単位でみるのがよい気がします。

どう対応?

このような地域では、特別な体制は不要ですね。いつもと同じ対応。感染防御も処置の仕方も。だけどその地域で最初のCOVI-19の可能性もありますし、他の感染症の可能性だってありえますから手袋、マスクなどいつもの対策はちゃんと必要です。

2. 感染確認地域・感染拡大警戒地域

どこが該当?

感染確認地域」とは、直近1週間の新規感染者数やリンクなしの感染者数が、その1週間前と比較して一定 程度の増加幅に収まっており、帰国者・接触者外来の受診者数についてもあまり増加していない状況にある地域です。

・・今 (2020/4/9) はたくさんの地域がここに該当するのでしょう。心肺停止の方がCOVID-19の感染者かもしれない可能性があります。実際に心肺停止で運ばれた陽性患者の報道がされてます。

感染拡大警戒地域」とは、直近1週間の新規感染者数やリンクなしの感染者数が、その1週間前と比較して大幅な増加が確認されているが、オーバーシュート(爆発的患者急増)と呼べるほどの状況には至っていない。また、直近1週間の帰国者・接触者外来の受診者についても、その1週間前と比較して一定以上の増加基調が確認される地域です。 重症者を優先する医療提供体制の構築を図ってもなお、医療提供体制のキャパシティ 等の観点から、近い将来、切迫性の高い状況又はそのおそれが高まっている状況の地域も該当します。

・・今(2020/4/9)は、東京や大阪などが該当するのでしょう。

どう対応?

このような場合にどうしたらよいか?すでによい指針が出ています。救急外来部門における感染対策検討委員会の「心肺停止(CPA)症例(病院前診療を含む)に対する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策について」です。これは医療機関の医療従事者を対象としたものですが、救急隊員の救急業務にも応用可能です。そのまま準用できるでしょう。119番通報の内容から次の3つに分類します。

もちろんすべての例にN95マスクをはじめとしたフル装備が感染防御の意味では理想ですが、途中で資器材が足りなくなってもいけません。すでに医療機関ではN95マスクが極端に不足しているところがでています。フル装備だと処置の一つひとつの正確性、迅速性が少しずつ低下することも忘れてはいけません。そういった意味で現実的な対応に思えます。

① 心停止前の発熱も呼吸器症状も否定できる場合

  • スタンダードプレコーションによる通常対応を行う

② 心停止前の発熱または呼吸器症状のエピソードが聴取できる場合

  • 通常の眼・鼻・口を覆う個人防護具(アイシールド付きサージカルマスク,あるいはサージカルマスクとゴーグル/アイシールド/フェイスガードの組み合わせ),ガウン,手袋に,N95 マスクを追加する

③ 心停止前の発熱や呼吸器症状についての情報が不十分な場合

  • 推定される心停止の原因,地域での流行状況,N95 マスク等の需給状況を鑑みて総合的に判断する

3.医療崩壊地域

どこが該当?

この地域名が適切なのかわかりませんが、いわゆる”医療崩壊”した地域です。 感染者の増加により医療供給体制の限度を超える負担がかかり、医療現場が機能不全に陥った状態です。

本当は、医療の崩壊の状況とその地域の感染者の割合の状況は一致するわけではありません。なので、もっとよい区分があるとよいのでしょうが・・・。

どう対応?

それが否定されるまでは、 すべての心肺停止傷病者を新型コロナウイルス感染症として対応する必要があります。ですから、通報段階で心肺停止が確認されたらN95も含めたフル装備での対応です。この段階ですとCPAに限らずすべての傷病者対応も同じ装備が必要なのでしょうが、N95マスクなどに限りがある場合、よりリスクの高いものを選別する必要が出てきます。CPA対応は最も大きなリストとして捉えて対応します。

まさかCPAにもN95が装備できない状況なんて考えたくないです・・・・。調達のかかりの人の仕事がうまく進んでいることを祈っています。

家族・関係者の同乗は?

感染の観点から家族・関係者の救急車の同乗について考えてみます。救急隊員がN95をつけなければ行けないほどの感染リスクがある場所であれば、救急隊と同様の装備でないと家族・関係者は救急車に同乗できないのでしょう。資器材不足の折に、救急隊と同様の装備をしてもらうわけにもいきません。基本的に家族・関係者の同乗は断る必要があります。

ただ、これまで自宅で一緒に暮らしていた家族ですので、傷病者と感染リスクは同じであり、同乗を求める場合もあるでしょう。この場合は、感染リスクについて説明の上で同乗いただくのもやむを得ないでしょう。

まとめ

ということで、これまでをまとめると次のとおりです。これぐらいがよいのではないでしょうか?

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