救急救命士制度は、病院前救急医療体制の充実を目的に発足したため、その業務の場所は病院前に限られていました。医療機関での実施は禁止されていたのです。
しかし、2021年に救急救命士法の改正がなされ、医療機関においても入院する前までの傷病者(患者)に対しては救急救命処置の実施が可能となりました。
その背景には、救急医療にかかわる医師の過重労働の改善や、救急医療機関での人手不足の解消、さらには、消防機関に属さない救急救命士の資格者数が増加していたことなどがあります。
ここでは、救急救命士が医療機関で業務を実施する関する法令やガイドラインをまとめました。
●医政局長通知 「救急救命士法の施行について」
法改正の内容を局長通知でも示したもの。
●医政局長通知
救急救命士法施行規則の改正の内容を留意点等を示したもの。院内研修の内容について示している。
なお、日本救急医学会・日本臨床救急医学会が示した「ガイドライン」については、
関係学会が作成するガイドラインを参考にすることが望ましいこと
と記載されています。つまり目標です。強制ではありません。厚労省の担当者の説明を聞いていると、あたかも強制かのように聞こえることもあるかもしれませんが・・
同じ通知を消防庁からも周知されています。
●課長通知
法改正にともない、次の内容を周知するもので、実質的な内容は乏しい。
- 過去の通知である「救急救命処置の範囲等について」の一部修正
- 関係学会が作成するガイドラインについて紹介
なお、ここでも、学会のガイドラインについて、
ガイドラインを参考にされいたこと
として、「あくまで参考ですよ」と記載しています。通知状はガイドラインにはあまり縛られる必要はなさそうです。
●学会ガイドライン
そしてこれが救急医学会、臨床救急医学会が出したガイドラインです。学会が出したことになっていますが、内容は厚労省等を十分に調整して出されたもののはずです。
ただ、医療機関で働く救命士の資格認定などについて、都道府県MC協議会が関与するのはちょっと無理がありそうです。
なぜなら都道府県MC協議会は消防機関のMCを対象に作られたものですし、予算もそのために確保されています。MC協議会の事務を支える人たちの多くは、消防組織の方だろうと思うからです。
まあ、どっちにしても、上記に示した通り、ガイドラインはあくまで参照です。なのでなし崩し的に、医療機関ごとに勝手に進んでいくものの想像します。