傷病者の意思に沿った救急現場における心肺蘇生の実施に関して、消防庁でとりまとめられた報告書、現状を報告するレポート、地域の取り組みに関するパンフレットなどの資料をまとめました。
1.消防庁資料
まずは、消防庁の「救急業務のあり方に関する検討会」の下に開催された「傷病者の意思に沿った救急現場における心肺蘇生の実施に関する検討部会」報告書です。令和元年にまとめられています。消防庁が、この問題に正面から取り組んだ報告書です。
ただ、「このように対応すべきだ」という明確なことは述べられていません。いろいろな考え方がある中、「条件が整えば現場で救急隊が蘇生を中止する」もあるし、従来どおり「傷病者の希望の有無にかかわらず心肺蘇生は継続して医療機関に搬送する」という対応もあるようね、という報告書になっています。
でも、「条件が整えば現場で救急隊が蘇生を中止する」こともOKということを消防庁が報告書として示したのは大きいですね。これまでは、現場で蘇生を中止することは違法であるという考え方が広がっていたわけですから。
この報告書の作成過程で行われた消防庁による実態調査(2018年)が次のとおり報告されています。それ以降(2019、2021)も実態調査が行われています。
●消防庁調査(2019)(救急業務のあり方に関する検討会報告書の一部)
●消防庁調査(2020)(救急業務のあり方に関する検討会報告書の一部)
2.地域の取り組み
東京都:報道発表はこちら。都民向けパンフレットはこちら。医療機関向けパンフレットはこちら。
埼玉県:埼玉県西部第一地域メディカルコントロール協議会からの報告はこちら。
愛知県:県からの通知はこちら。県のガイドラインの広報サイトはこちら。
広島県:広島市は2003年から心停止傷病者が,悪性腫瘍の末期など蘇生術の施行がふさわしくない背景があって,患者本人などが蘇生術を望まない場合に、かかりつけ医に連絡をとり、かかりつけ医からそれが確認できれば、蘇生を中止する活動を実践しています。この対応で、これまで大きなトラブルはないとのこと。近年の活動をまとめた報告(消防本部から:1、2 MCにかかわる医師から:3、4)がなされています。広島県・市の先駆的な取り組みが、学会のガイドラインや国の報告書につながっています。
兵庫県:兵庫県 東播磨・北播磨・淡路地域メディカルコントロール協議会からの報告はこちら。
3.学会などのガイドライン
日本臨床救急医学会からの提言(ガイドライン)です。広島県などの地域の取り組みを参考に作られた提言です。この提言が国や全国各地域の取り組みにつながっています。
厚生労働科学研究での基礎調査(報告1,2)などです。