米国シアトルは、院外心停止の蘇生率が高いことで知られています。蘇生アカデミー(Resuscitation Academy)は、シアトルでの知見を世界に発信している団体で、最近はGlobal Resuscitatio Acadmy としてその活動を広げているようです。
今回、シアトルの蘇生アカデミーは、COVID-19パンデミックに対応するための“10のステップ”を作成し公表しています。日本語訳も発表されていましたので、その概要を簡単に紹介します。
“10のステップ” は、傷病者を救うための処置と、救急隊員の安全確保を両立させるための取り組みです。是非、本文を確認してほしいのですが、 折角なので いくつか面白い内容を紹介します。
まず、”Step3 PPEの着脱”です。N95マスク、保護メガネ(アイシールド)などいずれも日本と同じですが、その着け方、外し方の覚え方です。着けるときはMEGG(Mask→Eyewear→Gown→Gloves)として、外すときはその逆でGGEMと言っています。覚えやすいですね。ただ、その間に手を洗うタイミングなどがあるので、一番良いのは、着衣、脱衣の手順をポスターにして張り出して、いつもそれを見ながら着用するのがよいのでしょうが。
”Step 4 スカウト(先遣隊員)の派遣” も面白いです。スカウトって何? って思いましたが、まず一人で先に状況を見る役割の人ですね。救急隊が全員で一緒に現場に入ると皆の汚染のリスクが高まるので、一人で現場や傷病者の様子を見にいって、初期評価や換気などをしてから他の隊員も現場に入ろう!みないな感じです。「野球選手のスカウト」と同じ感じのスカウトのイメージです。日本語でいうと、まさに先遣隊です。ただ、一人でいくようなので”先遣隊員”としているのでしょうかね?
”ステップ5 傷病者対応の変更"は、BVM換気とか気管挿管などの具体的な実施方法を示しています。 「BVMで換気を行う際には、必ずマスクの密着を継続的に維持する(例えば、2人をBVM換気に割り当て、1人は両手でマスクホールドを、もう1人は換気を行う)」 とか、「気管挿管は、声門上デバイスよりも推奨」とかです。
マスクで覆うことで、傷病者の呼気による汚染を軽減しようということでしょう。また、気管挿管がもっともエアリークが少ないことを背景とした推奨でしょう。ただ、日本の救命士の挿管の経験数は、シアトルのパラメディックほどではないでしょうから、そのまま日本に適応してよいのかはわかりません。その意味では、やはり日本のガイドラインが待ちどおしいですね。
”ステップ10 リーダーシップ”なんかは、いかにも米国らしい記述です。でもいいこと書いています。指導救命士の方なんかは特に参考になるのではないでしょうか?
詳しくは、ぜひ本文をご確認ください。