新型コロナウイルスによる感染症の影響が広がっています。救急隊員の活動もその例外ではありません。様々な影響が及んでいます。ここでは、救急隊による心肺蘇生の実施などについて考えてみます。

① 新型コロナウイルスに感染した心肺停止傷病者への対応

新型コロナウイルスの感染した傷病者へ救急隊が心肺蘇生を実施した0歳の事例も報道されています。この事例は自宅で心肺停止となり大学病院に搬送されており、救急隊が心肺蘇生を実施しています。(0歳児ですから、あの地域だとドクターカーも出動しているかもしれませんね。)

今後、東京なり大阪なり他の地域なりで、新型コロナウイルス感染症の患者が、自宅やホテルなどで療養することになると、その人々の状況が悪化した場合には救急隊が要請されることも十分に考えられるでしょう。考えたくはありませんが中には心肺停止の状態で・・ということも想定しておく必要があります。

② 心肺蘇生などによる新型コロナウイルス感染のリスク

心肺蘇生の実施は、濃厚接触の一つとされています。日本環境感染学会の医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第2版改訂版 ver.2.1)では、心肺蘇生、用手換気、気管挿管などを〝一時的に大量のエアロゾルが発生しやすい状況″としています。

米国のCDCも、「コロナウイルス疾患患者に対する医療環境での曝露の可能性がある医療従事者のリスクアセスメントおよび公衆衛生管理のための米国中間ガイダンス」においても、

〝医療提供者の目、鼻、または口が保護されていない状態で、COVID-19患者に対して、エアロゾルを発生させる処置、または呼吸分泌物のコントロールが悪いと思われる処置(例えば、心肺蘇生挿管、抜管、気管支鏡検査、ネブライザー療法、喀痰誘導など)のために部屋に立ち会うことは、ハイリスクと考えられる。” 

としています。

③ 心肺蘇生などを行う際の留意点(日本)

日本救急医学会や日本環境感染症学会など5学会の合同WGが発表した「心肺停止(CPA)症例(病院前診療を含む)に対する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策について 」では、医療機関による医師の診療を前提に、次のような考え方を示しています。

ア)心停止前の発熱も呼吸器症状も否定できる場合 

 スタンダードプレコーションによる通常対応を行う

イ)心停止前の発熱または呼吸器症状のエピソードが聴取できる場合 

 通常の眼・鼻・口を覆う個人防護具(アイシールド付きサージカルマスク,あるいはサージカルマスクとゴーグル/アイシールド/フェイスガードの組み合わせ),ガウン ,手袋に,N95マスクを追加する

ウ)心停止前の発熱や呼吸器症状についての情報が不十分な場合

 推定される心停止の原因,地域での流行状況,N95マスク等の需給状況を鑑みて総合的に判断する

ただし、これは、医療機関による医師の診療を前提とした提言ですので、救急隊の活動をこれに当てはめようとすると基本的に③に該当するのでしょう。

④ ILCORのガイドラインの状況

ILCOR( 国際蘇生連絡委員会 )が、COVID-19に関連して CoSTR(Consensus on Science with Treatment Recommendations )として、 ”COVID-19 infection risk to rescuers from patients in cardiac arrest” を発表しています。

これまでのCoSTRへの対応からすると、数カ月後に日本語訳と日本蘇生協議会(JRC)としての見解が発表されることになります。ただ今回は少しでも早く発表してほしいですね。

⑤ CDC (Centers for Disease Control and Prevention: アメリカ疾病予防管理センター ) のガイダンス

米国のCDCは、米国国内のEMS Serviceなどを対象に、活動全般についての感染予防に関するガイダンス ”Interim Guidance for Emergency Medical Services (EMS) Systems and 911 Public Safety Answering Points (PSAPs) for COVID-19 in the United States”を発表しています。

ざっとした日本語訳(機械翻訳)したものの後ほどアップします。(日本語は、ほぼ機械翻訳のままですので、正確なところは英文をご確認願います。)

⑥ UK Resuscitation Council  (英国蘇生協議会)の声明

英国蘇生協議会が積極的に、COVID-19に関する声明を発表しています。いくつか紹介します。

入院中のCOVID-19患者の蘇生に関するフローチャート (日本語訳を次からダウンロードしてください):ほぼ機械翻訳のままですので、正確なところは英文をご確認願います。)

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